工場内の温度管理や、移動している車両の位置情報の取得など、今や産業のあらゆる場面で活躍しているIoT(Internet of Things、モノのインターネット)。その概念はクラウドが普及し始めた2010年ごろに生まれ、2015年ごろになると徐々に実装が広がった。
そのような黎明期から、現場に設置されるIoTデバイスと、デバイスから送られてくるデータを収集・解析するクラウドサービスをつなぎ、コネクテッド化する「IoTプラットフォーム」を提供してきたのが、2015年にサービスを開始したソラコムだ。
同社 代表取締役社長 CEOの玉川憲氏は、2010年よりアマゾン ウェブ サービス ジャパンの日本市場立ち上げを技術統括として牽引。前職でメガクラウドの立ち上げに携わったクラウド領域のトップランナーの一人である。
「当時、『製造現場に設置したIoTデバイスのデータをクラウドにためたいが、どうすれば2つをつなげられるのか?』という製造業のお客さまからの問い合わせが非常に多かったのです。それなら自分が間をつなぐ通信プラットフォームを提供しようと考えました」と、玉川氏はソラコム創業の経緯を語る。
株式会社ソラコム
代表取締役社長 CEO
玉川 憲 氏
IoTデバイスにSIMを挿入し、モバイル通信ネットワーク経由でクラウドとデータをやり取りできるようにするのが、ソラコムの「IoTプラットフォーム」である。世界186の国・地域にある430以上の通信キャリアのネットワークが利用可能だ。
「利用されている業界も、製造からヘルスケア・介護、コネクテッドカー、金融、店舗・小売、建設など様々です。日本にいながらでも、地球の裏側にある工場や倉庫、車両などを管理できるようになるのが強みです」と玉川氏は説明する。
現在では、物理的なSIMカードだけでなく、あらかじめIoTデバイスにSIMの機能を組み込んでおくeSIMも提供されている。これにより、IoTデバイスメーカーは最初から通信機能を備えた製品の開発が容易になった。現在、多くのメーカーがソラコムとの共同開発によって、同社のeSIMを内蔵した多様なIoTデバイスを提供している。
10年にわたって「IoTプラットフォーム」を提供しているソラコム。IoT通信においては、契約回線数はグローバルで700万を超える。通信だけでなく、デバイス、クラウドと、IoTシステムの開発・運用のために必要なサービスを提供しているのが強みだ。写真下左:カード型SIM、上右:チップ型SIM(eSIM)
あらゆる企業がIoTを使いこなせるさらに、ソラコムのサービスは通信の枠を超え、IoTデバイスから送られているデータをため、利活用できるクラウドサービスの領域へと範囲を広げている。
「IoTの利活用に不可欠な『通信』『デバイス』『クラウド』の3つの要素をそろえ、ブロック玩具のように組み合わせることで、あらゆるIoTニーズに対応できる製品・サービス群を整備してきました。業種や事業規模を問わず、あらゆる企業が目的に応じてIoTを使いこなせる『IoTの民主化』を実現したいというのが、我々のビジョンです。我々だけでは実現が困難なほど壮大なビジョンなので、様々な強みを持つパートナーと手を組んで目指しています」(玉川氏)
そんなソラコムの頼もしいパートナーの一社が、多様なIoTデバイスを開発・製造するJENESIS(ジェネシス)だ。同社は2011年に中国の深センで創業。現地に製造拠点を置く日系企業向けの品質管理代行や製造コンサルティングから始まり、製品の受託開発・製造へとビジネスを広げていった。
「2013年に中国で自社工場を設け、デジタル機器をはじめとするコンシューマー向けに特化した製品作りを行ってきました。その後、労働力人口の減少をはじめとした社会問題に苦しめられている日本の産業界に貢献するため、業務効率化や生産性向上につながる産業向け通信デバイスの開発・製造に注力することにしたのです」と語るのは、同社 代表取締役社長 CEOの藤岡淳一氏である。
JENESIS株式会社
代表取締役社長 CEO
藤岡 淳一 氏
現在、JENESISは、ソラコムとの共同で革新的なIoTデバイスやソリューションの開発・製造を行っているほか、顧客企業の注文に応じてカスタムメイドのIoTデバイスも数多く手がけている。「中国で長年“モノづくり”に携わってきた経験とサプライチェーンを生かし、金型製造から基板設計やシステム開発、半導体などの電子部品の調達、組み立てまで、すべての工程を一貫して請け負えるのが何よりの強みです」と藤岡氏は語る。
製造は中国だが、あくまで日本品質にこだわり、小ロットから大量生産まで柔軟に対応可能。その製品クオリティーの高さはグローバルでも高く評価されているという。
ちなみにJENESISは、かつて「ラジカセ」などのオーディオ機器で一世を風靡した家電メーカーのアイワから、2022年にaiwaブランドのITおよびデジタル製品、2024年にオーディオ機器の商標使用権を取得している。今後、アイワが長年培ったオーディオ技術とIT・デジタルの技術を融合させたコンシューマー向け製品の開発・製造・販売にも注力していく計画だ。
小ロット、低コストで導入可能な「IoTの民主化」を目指すソラコムは、先端的なIoTデバイスを手がけるJENESISとタッグを組んで、社会課題の解決に貢献する様々なデバイスを開発してきた。
その一つが、MIXI(ミクシィ)から製品化された、ランドセルの中などに入れておける子ども向けの小さなGPS端末「みてね みまもりGPS」である。
昨今では核家族化や共働き世帯の増加により、子どもが1人で出歩く機会が増加している。特に登下校時を中心に、子どもの外出に不安を感じる家庭が増加している。
同製品にはソラコムのeSIMとGPS機能が組み込まれており、送られてくる位置情報を基に、子どもが今、どこにいて、どのように移動しているのかをスマートフォンの地図上で見ることができる。
ランドセルに入れておくだけで、子どもが今、どこにいるのかが分かる「みてね みまもりGPS」。GPSに搭載されたAIが子どもの「よく行く場所」を学習し、場所の出入りを自動で検知してお知らせしてくれる ©MIXI
子ども向けのGPS端末で重要なのは、バッテリー持ちだ。持ち歩いても充電を忘れてデバイスがバッテリー切れになっていると、位置情報を確認できない。このデバイスは、バッテリーが約2カ月間持つのが大きな特徴である。バッテリー消費を極力抑えるために、JENESISとソラコムの技術が活用されている。
低電力消費のセルラー通信規格であるLTE-Mや、デバイスに代わってクラウド側でデータの暗号化処理やクラウド連携のための認証付与を行う「SORACOM Beam」というデータ転送サービスと、これらのサービスを踏まえたJENESISのデバイス設計・製造とサーバー開発により、バッテリー消費を抑えるシンプルなデバイスが実現可能になる。ソラコムとJENESIS、それぞれが持つ高度な技術と知見を巧みに掛け合わせることで、顧客の要望や用途に合わせた、便利で使いやすいデバイスを開発することができる。
思い立ったらすぐにIoT運用を始められる2025年の夏には、両社のタッグによる新たなIoT製品がリリースされる。どんな会社でも利活用できるように、小ロット、低コストでの導入を可能にした汎用型IoTデバイス「GPS+BEACON EDGE UNIT」である。
「GPS+BEACON EDGE UNIT」は、手のひらに載るほど小さな筐体の中に、GPS、ビーコン(近距離用の位置情報発信装置)、加速度、温度、湿度の5つのセンサーを詰め込んだ汎用型のIoTデバイスである。
ソラコムとJENESISが共同開発した汎用型IoTデバイス「GPS+BEACON EDGE UNIT」。業種を問わず、様々な用途に利用できる
「ソラコムがこれまで様々なIoTデバイスを提供してきた中で、業種を問わず最もニーズが高い位置情報、温度情報、湿度情報などが取れる汎用性の高い製品として開発しました。例えば、トラックの運転席に置けば、それだけで位置情報が取れるようになりますし、倉庫の棚に置けば温度情報や湿度情報がリアルタイムに入手できます。思い立ったらすぐにIoT運用を始められるのが、非常に大きなメリットだと言えます」(玉川氏)
しかも、小ロット、低コストで導入できるのが「GPS+BEACON EDGE UNIT」の特筆すべきポイントだ。
「IoTデバイスを独自に開発・製造するとなると、最低ロットは数千台以上。さらに金型の製造や基板の設計などのコストを加えると、数百から1000万円のコストがかかります。その点、『GPS+BEACON EDGE UNIT』は開発費用がかからない汎用型なので、1台からでも導入が可能。初期コストも格段に抑えることができます」(藤岡氏)
大規模な商用利用も可能だ。要望に応じてカスタマイズにも対応するが、その場合でもイチから開発・製造する製品と比べれば、格安かつ高速で導入できる。
「GPS+BEACON EDGE UNIT」のような製品をリリースし、どんな会社でもIoTを利活用できる世の中にしたい、というソラコムの思いには、藤岡氏も強く共感しているという。
「1年の半分以上を中国の深センで暮らしている私から見ると、近未来型DX先進都市の深センと比べて、日本のビジネスにおけるIoTの利活用はまだまだ遅れていると実感しています。今後もソラコムとの連携を強化しながら、誰もがIoTを気軽に利活用できる社会の実現に貢献していきたい」(藤岡氏)
玉川氏も、IoTとコネクテッドデバイスのさらなる利活用に意欲を示す。
「日本では、スマートフォンはほぼ100%普及していますが、生活においても、ビジネスにおいてもIoTデバイスの普及は現在進行形です。さらに今後は、今はない新しい価値を提供するデバイスも生まれていくでしょう。
言い換えれば、伸びしろは非常に大きいということ。ソラコムは今後も様々なパートナーとの協業を通じて、IoTの普及を拡大させたいと考えています。一緒に取り組みたい企業や、IoTの利活用を検討しておられる企業の方は、ぜひご相談ください」
ソラコムは7月16日(水)、日本最大級のIoTカンファレンス「SORACOM Discovery 2025」を東京ミッドタウン(東京・六本木)で開催する。IoTとAI、そしてビジネスが交差する「Crossroad」をテーマに、最新テクノロジーのビジネスインパクトや最新動向、実践事例をセッションと展示会で紹介。JENESISも講演、出展する。詳細・申し込みはhttps://discovery.soracom.jp/2025/にて
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